オバマにのしかかる中東の「高すぎる期待」
2008年12月号
米大統領選挙でのバラク・オバマ上院議員の当選に中東はどう反応しているのか。「市井の声」でいえば、選挙期間中、中東諸国ではアメリカ内政の詳細への知識はほとんどないままオバマに対する期待が圧倒的だった。オバマが政権に就けば米国の中東政策の大部分が変わるかのような印象が充満していた。勝利宣言を受けたペルシア湾岸諸国の街の声を報じるサウジアラビアの日刊紙『リヤード』は「オバマの勝利を歓迎する湾岸諸国民『われわれはアメリカ政治の八〇%が変わると期待する!』」といった見出しを打った。 なによりも「人種差別を超えた」というところが評価されているのに加え、「父親がムスリム(イスラーム教徒)」というのも一般的には親近感を与えているようだ。選挙期間中、対抗陣営から「イスラーム教徒である」というささやき作戦をかけられた際に、オバマは冷静に対応し、「自分はキリスト教徒である」という言い回しを用いて「疑惑」を退けるのみだった。アメリカの膨大なキリスト教保守層を意識して過剰にイスラーム教の価値観を否定してみせたりはせず、各国のムスリムの自尊心を傷つける発言を極力避けていたようである。 現在のところ、アラビア語各紙の論調は、オバマ当選を歓迎するとともに、それを現ブッシュ政権への審判とみて、批判の攻勢を強める形となっている。アラブ側のブッシュ批判を「米国民も認めざるを得なかった」と納得するのである。
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