投資銀行ビジネスはなぜ暴走・破綻したのか。大きな原因の一つに、過剰な「リスクテイク」に駆りたてる報酬制度があるのは間違いない。 米国に「投資銀行」と呼ばれるカテゴリーで、大規模な会社はなくなってしまった。 何が「投資銀行」なのかは必ずしも明確でないが、法人顧客を相手とする大手の証券会社で、自己勘定での投資を積極的に行なう業態の金融機関だと考えておこう。制度的には証券会社であって、預金の受け入れ、決済といった、通常の銀行業務は行なわない。 投資銀行のビジネスは多様だ。株式、債券等の証券の引き受け・販売と自己勘定でのトレーディング、デリバティブのトレーディングと対顧客ビジネス、さらには法人向けの証券ブローカレージ(売買仲介)業務、M&A(企業の合併・買収)の仲介、自己勘定での投資などがある。 投資銀行のビジネスの範囲はこれまで一貫して拡大を続けて来た。本国の米国ではもちろんのこと、日本などの外国における活動も含めて、少なくともサブプライム問題が本格的に表面化する昨年の夏以前までは、投資銀行のビジネスは極めて順調だった。 そして、これまで長年、銀行、証券を問わず日本の金融界にとって「投資銀行業務」は、これを何とか「様になる」レベルに持ち上げて、将来は国際的にも認知されるプレーヤーになりたいという目標を持つ重点分野だった。米国の大手投資銀行は、ライバルという以上に、仰ぎ見るような憧れの存在だった。

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