「京」の時代の金融危機のとめどなき恐怖

執筆者:滝沢伯文2008年12月号

いつの間にか「兆」では表せない額のマネーの渦に巻き込まれていた。金融による世界のメルトダウンはまだ止まっていない……。[シカゴ発]たとえ話から始めよう。地球から月までの距離は、およそ三十八万キロメートル。光なら一瞬のこの距離を、仮に一万円札を重ねてせっせと埋めるとしたら、一体いくら必要なのだろうか。銀行の帯封がかけられた新札百万円の厚さは一センチメートルだから、三京八千兆円(!)の札束を積まなければならない。まさに天文学的な数字だ。 だが、実は地上にはそれ以上のマネーが渦を巻く。デリバティブと呼ばれる金融派生商品の総額は、なんと六京円近いとみられるのだ。 デリバティブは、先物(商品を将来受け渡す価格を今決める取引)やオプション(将来のどこかで商品を決められた価格で売り買いする権利の売買)、スワップ(将来の金利や通貨をあらかじめ契約した条件で交換する取引)などの総称だ。最近よく目にするCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)もその一種で、保有債権の発行元の企業や国家が倒産した場合の損失を回避するための保険のようなものだ。その市場規模はデリバティブの総額の一割程度であるにもかかわらず、金融システムを根底から揺るがしている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。