1980年製のサンディエゴの地図。海軍基地の詳細が書き込まれている(ケント氏提供)。
 

 長年、旧ソ連が秘密裏に作成していた世界地図は、その精緻さと膨大さにおいて西側諸国の地図を凌ぐものだった――。「レッド・アトラス」と呼ばれ、現在のロシアでもいまだに機密扱いとなっているというそれらの地図だが、ソ連崩壊後の混乱の中で、一部はいくつかのルートを通って西側に流出した。

 その「レッド・アトラス」研究の第一人者が、英国地図製作協会会長を務めるアレクサンダー・J・ケント氏(英国カンタベリー・クライスト・チャーチ大学準教授)である。今年3月、同じく英国の地図研究者であるジョン・デイビス氏との共著『レッド・アトラス――恐るべきソ連の世界地図――』(日経ナショナルジオグラフィック社)を上梓したケント氏が、7月中旬、国際地図学会議東京大会に参加するために初来日した。

 第2次世界大戦から冷戦終結までの間に、ソ連は全世界2200都市の詳細な市街図を作成したと言われている。ケント氏は学会で、「レッド・アトラス」で使われた地図記号の体系や、実際の作成過程について、長年の分析の結果を披露した。さらに、東京での会議ということで、1966年に作成されたソ連製「東京市街図」に焦点をあてた分析結果も発表した。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。