海外から「高度人材」を招き寄せよ

執筆者:出井康博2008年12月号

 今年十月、四人の日本人がノーベル賞を受賞した。そのうち物理学賞の南部陽一郎シカゴ大名誉教授(八七)と化学賞の下村脩ボストン大名誉教授(八〇)は、長く米国を拠点にしてきた研究者だった。 米国に対する世界の信頼は、イラク戦争の泥沼にウォール街が作り出した世界規模の金融危機も重なって地に堕ちた。とはいえ、国家戦略として世界中から優秀な人材を呼び込み、それを成長の糧としてきた強さは簡単には揺らがない。二人の日本人研究者による今回の快挙も、米国が活躍の場を提供しなければ有り得なかったはずだ。 想像してもらいたい。もし、日本に移住したインド人やフィリピン人の研究者がノーベル賞を取ったとしたら……。おそらく大半の日本人が拍手を送り、日本という国が持つに至った度量の大きさを誇らしく思うのではなかろうか。 日本政府も、研究者や技術者を海外から積極的に迎え入れる方針をようやく強めようとしている。今年五月には、福田康夫首相(当時)を議長とする経済財政諮問会議が、在留外国人の「高度人材」を現在の十五万人から二〇一五年には二倍の三十万人まで増やすよう提言したばかりだ。 企業の間でも「グローバル採用」という言葉が流行しているように、若くて優秀な外国人を取り込む重要性が語られ始めた。日本人の若者の「理系離れ」もあって、とりわけ技術者らへのニーズは高い。

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