ウクライナ混沌の陰にオリガルヒあり

執筆者:大木俊治2008年12月号

[モスクワ発]北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指してロシアと対立してきたウクライナで、ユーシェンコ大統領とティモシェンコ首相の対立から内政が麻痺状態に陥っている。大統領は十月、議会の解散と繰り上げ選挙を命じたが、その後この決定は棚上げになり、選挙は年明けに持ち越されそうだ。十二月のNATO理事会で協議されるはずだったウクライナのNATO加盟問題も、先行きが見えなくなってきた。 大統領と首相はともに二〇〇四年の「オレンジ革命」で政権を握った親欧米・民主派の立役者だが、今夏から対立は決定的になった。人気が落ち目の大統領に対し、首相が支持率を急速に伸ばし、来年末に予定される次期大統領選挙で最大のライバルと目されるようになったからだ。 八月、ロシア軍のグルジア侵攻でグルジアへの全面支援を打ち出した大統領に対し、対露関係の悪化を懸念する国内世論に配慮して、首相派はヤヌコビッチ前首相が率いる親露派野党・地域党と組んで反対の動きに出た。さらに九月初め、両者は大統領の権限を縮小する法案を採択。これに反発した大統領派が首相派との連立政権から脱退したのが混乱の始まりだ。首相はその後、地域党との連立を模索したが不調に終わり、再び大統領派との和解を目指したものの、首相の気まぐれに嫌気の差した大統領は受け入れず、大統領令を発して解散に踏み切った。

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