外資系金融機関で働く高給取りの中国人社員にリストラの嵐が吹き始めた。人民元高で広東省などの工場で働く労働者の大量解雇が相次いでいたが、米国発の金融危機でホワイトカラーにもリストラの波が及んだ格好だ。 アジアの金融センターを目指す上海の金融街には、開業間もない森ビル「上海ワールドフィナンシャルセンター」をはじめ高層ビルが林立する。中国が二〇〇一年の世界貿易機関(WTO)加盟で金融分野の開放を推進したことから、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほコーポレート銀行などの邦銀のほか、米シティバンクや英HSBCといった欧米の有名金融機関も軒並み業務を本格化した。 しかし、もともと社会主義の国だけに、専門的な金融知識を持った人材はほとんどいなかった。中国人民銀行の周小川総裁が理工系の名門、清華大の工学博士であることに象徴されるように、中国の金融関係者はこの数年、留学などでなんとか金融知識を身につけた人物が多い。 一方で、外資系金融機関は中国の発展を見込んで業務を急速に拡大。金融のノウハウを持つ中国人の奪い合いが起き、給料の相場も跳ね上がった。上海で働く四十歳前後の課長級の銀行員が、日本円にして百万円近い月収を得ていることも珍しくない。邦銀の駐在員が「私よりも中国人の給料のほうが高い」とぼやくほど厚遇されていた。

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