巨大企業GMの「最後の日々」を追う

執筆者:新垣洋2008年12月号

いよいよ切迫してきたゼネラル・モーターズの経営状況。破綻すれば米国経済への影響があまりに大きいだけに、誰もが固唾をのんで……。[シカゴ発]十一月七日午後一時半、米中西部に位置するシカゴ市。オバマ次期大統領の地元を南北に走るミシガン通りに面したヒルトンホテルのロビーに記者たちがたむろしていた。 お目当ては、オバマ氏と経済顧問チームの初会見だ。チームの面々は、元財務長官のサマーズ、ルービン両氏、ライシュ元労働長官をはじめ、民間からはタイム・ワーナーのパーソンズ取締役会議長、グーグルのシュミット最高経営責任者(CEO)など経済界の重鎮たちである。 記者だけではない。この会見を特に注目していたのが、米製造業の屋台骨といえる自動車産業だった。中西部はデトロイト市を中心とする自動車工場の集積地。しかも、世界最大手のゼネラル・モーターズ(GM)をはじめ、フォード・モーター、クライスラーの大手三社は現在政府に資金支援を要請している最中だ。 ところが、オバマ氏は、巨額の財政負担が必要となる大手三社への資金支援策について「自動車産業は苦境に直面し、中小企業などにも窮状が及んでいる。低燃費車の米国生産を成功させなければならない」と述べるにとどめ、「自分が就任するのは来年一月二十日であり、大統領は一度に一人しかいない」と話した。それまではブッシュ政権が事態への対応にあたるという筋論だ。その通りなのだが、「オバマ政権は自動車産業を救済するだろう」と織り込んでいた株式市場は、会見に敏感に反応。午前中に五ドル台で推移していたGM株は、午後に入ると最安値圏の四ドル二セントまで急落した。

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