親日家として日本でもよく知られていた(C)AFP=時事
 

 フランスのジャック・シラク元大統領が逝去して3カ月になろうとする(9月26日、享年86)。

 筆者には、シラクという政治家にひときわ深い思い入れがある。時を経るにつれ、思いが蘇ってくる。

 筆者がパリ第一大学大学院留学時代のはじめのころ、そしてフランス政治研究の緒についたばかりの時、現地で眼前にしたのはフランソワ・ミッテランとシラクの2人の政治家の丁々発止の駆け引きだった。百戦錬磨の練達議会政治家であるミッテランと、歯切れはよいがいかにも豪胆で単純なシラクとの戦いは、どうみても後者に分が悪かった。しかし少壮の筆者には、単純だが活力に溢れた後者にフランスの未来はあるように思えた。

 飛ぶ鳥落とす勢いのアジアの新参の経済大国から来た1人の駆け出しの学徒にも、フランスはそれほど疲弊し、老いているように見えたのである。

 そしてその後40年近く、筆者は仏大統領選挙と主だった議会選挙・国民投票は、すべて現地で視察することになった。主だった政党の全国大会にもほぼ出席し、現場で選挙戦を観察してきた。そのきっかけには、シラクという政治家がいた。

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