暴れん坊納豆

執筆者:阿川佐和子2019年12月30日
納豆を食べていれば心配ないです!

 

 久しぶりに小泉武夫さんにお会いした。お元気ですかと聞かれたので、年齢のわりに動脈硬化が進んでいると医者に言われたことを報告するや、

 「それは納豆がいいです。納豆を食べれば血管はどんどん元気になります!」

 間髪入れぬ堂々たるご発言。

 ご説明申し上げるまでもなく、小泉先生は別名納豆博士である。発酵学を専門とされ、ご自身、福島の造り酒屋の家に生まれたので、「僕の産湯は日本酒でした」と豪語なさるほど、発酵食品を愛しておられるお方である。ひと目会ったその日から、その楽しい語りと説得力の素晴らしさに心奪われ、以来四半世紀にわたり、年に数度はお会いして活力を頂戴している。お会いするたび納豆や味噌などの発酵食品がいかに身体にいいかを教えられ、「そうだそうだ」と深く頷く。そして翌朝はまちがいなく納豆を食べるのであるが、これがなかなか続かないのが難である、アイデアル。

 しかし、このたびは命の危険が迫っていた。「いつ血栓が詰まってもおかしくない状態」と医師に脅かされている。とはいえ、オタオタするほどの年齢ではない。いかに人生100年時代が訪れているといえども、これまでじゅうぶん健康に生きてきた。ここらで多少の身体不調をきたしたとしても、なんら不思議なことではない。むしろ今まで六十数年間、よくぞ毎日、いっときとて休むことなく身体中に血液を流し続けてくれたものよ。そろそろ疲れが出てもおかしくないだろう。血管君、ありがとう。どんなに性能のいい配水管でも10年経てばもろくなる、ゴミが溜まる、細くなる。それに比べて血管君は立派だ。文句一つ言わず、働き方改革の恩恵にあずかることもなく、日夜トクトクコツコツ。なんと健気なことでありましょう。そんな頼もしき血管の気も知らず、もとはといえば、私が長年にわたり好き勝手に飲み食いしてきたせいだ。自業自得である。

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