ドイツ ドイツ教育の「時代不適合」

執筆者:金井和之2009年1月号

[ベルリン発]かつては、ゲーテやシラーなどの大作家やカントに代表される数多の哲学者を世に送り出してきたドイツ。二十世紀半ばまでは、放射線を発見したレントゲンやブラウン管の発明者ブラウンら、物理、化学、医学などの分野でノーベル賞をほぼ独占するほどだった。優秀な頭脳が輩出した歴史を持ちながら、今や、栄光は見る影もない。 近年のドイツは、(1)経済協力開発機構(OECD)の学力調査で浮き彫りになった学力の低下、(2)ドイツ語を話せない移民の増加による、学級崩壊など教育現場の衰退――という二つの大きな問題を抱えている。一方、その流れとは逆に、優秀な学生をさらに伸ばそうと「エリート化」の傾向が高まっており、教育の二極化が進んでいる。 ドイツで教育制度の見直しを求める「PISAショック」が起きたのは二〇〇一年。OECDが公表した第一回学習到達度調査(PISA)での、目を覆わんばかりの結果に、国民はショックを受けた。というのも、三十二カ国中、読解力で二十一位、数学と科学が二十位と、先進国の中で最低レベルの結果だったからだ(日本でも〇三年に第二回PISA調査の結果が報告され、学力低下が問題になった)。その後の調査でも改善の兆候はほとんど見られない。

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