牡蠣ニモ負ケズ
2020年3月21日

「牡蠣は七転八倒し、そして七転び八起きするだけの価値がある」
最近、気に入っているオイスターバーがある。といってもまだ数回しか行っていないが、カウンターとテーブル席いくつかの小さな店である。その店の名物は「毎日、空輸で届く広島の新鮮な牡蠣」。オイスターバーだから当然かもしれないが、これがおいしく、なおかつ楽しい。氷を張った銀の大皿に、「かき小町」とか「先端」とか「大黒神島(おおくろかみじま)」とか名札のついた、それぞれに大きさもかたちも違う生牡蠣が並べられ、それを1つずつ小皿に取って、そのまま、あるいはレモンをかけて、はたまた特製ビネガーを垂らし、ギンギンに冷えたシャンパンか白ワインとともに、いただく。
「うーん、どれがいちばん好きだった?」
「そうだなあ。私は『先端』」
「『大黒神島』もおいしい」
「そうねえ。甲乙つけ難し!」
同伴者と語り合いつつ味わう……と、これもオイスターバーだから当然か。
そもそも私はオイスターバーと銘打った店に今までさほど馴染みがなかった。いつの頃からかオイスターバーなる店をところどころで見かけるようになり、一瞬、興味をそそられるのだが、「牡蠣か……」と逡巡し、結局、足を踏み入れないまま、今に至っていた。
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