完成直前「謎の死」を遂げた主人公

ドキュメンタリー映画『馬三家からの手紙』監督インタビュー

執筆者:野嶋剛2020年3月28日
謎の死を遂げた主人公の孫毅さん©2018 Flying Cloud Productions, Inc.

 

 3月21日に東京・新宿の「K’scinema」で、ドキュメンタリー映画『馬三家からの手紙』が公開された。

 中国・瀋陽の「馬三家労働教養所」(以下、馬三家)に収監された「法輪功」のメンバー、孫毅(スン・イ)が、その過酷な拷問や弾圧、釈放後も続く監視、嫌がらせなど、自身やメンバーに対する人権侵害の実態を告発する作品だ。

 2012年、米オレゴン州の女性が購入した中国製のおもちゃの箱から、英語で書かれた手紙が見つかった。馬三家の実態を訴えるSOSで、世界で大きな反響を呼び、中国の労働教養制度の廃止にもつながった。

 この手紙を馬三家での作業中に輸出用のおもちゃの箱に隠した人物こそ、本作の主人公・孫毅である。

 彼は石油会社の資源探査が専門のエンジニアで、学歴も高く、英語も堪能だった。しかし、中国で「邪教」として弾圧されている法輪功を修めたことで、馬三家に送られてしまう。

 2010年に釈放された後も、監視と拘束が断続的に続き、映画制作の過程で、身の危険を感じて中国からインドネシア・ジャカルタに亡命したが、映画が完成する前に突然の不審死を遂げた。

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