新型コロナによるこれほどの需要減は予想外だったのかもしれないが(C)AFP=時事
 

 数年ほど前、「戦略研究学会」主催の『エネルギー市場の未来と日本の技術戦略』と題された公開シンポジウムで、『「LNG市場戦略」は成功するのか?』と題して講演をしたことがある。

 市場は業界ニーズにより形成され、拡大発展する、というのが結論で、その年の5月に経済産業省・資源エネルギー庁が打ち出した「LNG市場戦略」なるものの脆弱性を指摘したものだ。

 講演の前段で、筆者の経験に基づく日本の石油トレードの歴史をご紹介した。

 始まった経緯だけを簡単に述べると次のようになる。

 敗戦によりすべてを失った日本の戦後石油産業は、欧米大手国際石油の技術、資金、原油供給により誕生し、形成されてきた。折から原油生産の「重心」が中東に移っていたころで、欧米大手石油は増産を続ける中東原油の販路を求めていたことも背景にある。

 バックに付いた大手国際石油がどの原油を売り込みたいかによって、日本の石油会社の精製設備の設計・建造は、サウジアラビア(サウジ)原油を基本とするところと、イランおよびクウェート原油を基本とするところにほぼ二分されていた。前者は「エクソン」「モービル」系であり、後者は「BP」「シェル」系だった。

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