イスラエルのガザ・ハマース攻撃は、中東と国際政治に権力の空白が重なった時期に勃発した。イスラエルではオルメルト首相が昨年九月に辞任を表明しながら、新政権設立が進んでいない。オルメルトはそもそもシャロン元首相の代役だった。二〇〇五年に新党カディーマを設立したシャロンが〇六年一月に脳梗塞で倒れて職務遂行不能となったため、イスラエル政治では例外的に、職業軍人のキャリアを背景としないオルメルトが首相となった。しかし〇六年夏にレバノンのヒズブッラー(ヒズボラ)への軍事作戦の挫折で力を失い、汚職疑惑で責めたてられて辞任表明を余儀なくされた。 カディーマ党の後継党首に選ばれたリブニ外相は、少数政党が乱立するイスラエル国会で多数派形成に失敗し組閣できず、オルメルト政権が暫定的に続いている。二月十日の総選挙の結果、新たな議会多数派が形成されてはじめてイスラエル政治の空白が埋まるが、野党リクードとその党首ネタニヤフ元首相の支持率が上昇してリブニをしのぐようになっていた。今回のガザ攻撃決断の背景には、政権与党とリブニの野心があるというのが大方の推測である。 一方、〇五年一月にパレスチナ自治政府大統領に当選したアッバースの任期は、厳密には一月九日に切れたはずである。選挙法改正で来年一月まで任期が続くというのがイスラエルと和平を進める主流派閥ファタハの苦しい説明だ。〇六年一月の総選挙で過半数を獲得し、〇七年六月にファタハとの市街戦を経てガザの支配権を掌握、イスラエルに軍事的に対峙するハマースは、自分たちこそがパレスチナ民族を正統に代表するという自信を深めている。

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