グテレス事務総長の平和を求める訴えは、なかなか届かない―― (C)AFP=時事

 

「新型コロナウイルス」危機に際して、3月23日、アントニオ・グテレス国連事務総長は、世界の紛争当事者に、停戦を求める訴えをした。

 国籍や宗教の違いにかかわらず、ウイルスは人間に襲い掛かる。医療施設・従事者が貧弱になっている紛争地を、新型コロナの猛威が席巻したら、大変なことになる――そう述べたグテレス事務総長の訴えは、われわれには至極もっともだと響く。新型コロナ危機が全世界に広がる中、誰にとっても戦争どころではないような気もする。

 他方で、今こうした訴えに納得するような者たちであれば、そもそも戦争をしているだろうか、という思いもする。果たして、グテレス事務総長の訴えは、世界の紛争当事者の耳に届いたのか。様子を概観してみたい。

「弱体化」サウジの「停戦宣言」――イエメン

 日本でも、イエメンの紛争に長く介入していたサウジアラビアが停戦を宣言したことが報じられた。実際に、湾岸諸国とともにサウジがイエメンの親イラン組織である「フーシ派」に対して行ってきた空爆は、4月8日の停戦宣言以降、止まっているようである。ただし、フーシ派側の対応は不明瞭なままだ。

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