免疫カレー

執筆者:阿川佐和子2020年5月9日
「カレーは身体によさそうな印象がある」

 

(3月27日発売の新潮社『波』4月号より転載しています)

 免疫力の高い食べものが注目されている。

 新型ウイルスに捕まらないために、もはやどこの国の人のそばにいかないとか、人混みに近づかないとか手をよく洗うとか、さまざまな情報に心を乱された末、結局、自らの身体の防衛軍を強化する以外、逃れる手立てはないという心境に達した。まさに体内軍事力強化の時代である。抵抗力をつけておけば、たとえウイルスの侵入を許してしまったとしても、回復の可能性は高くなるはずだ。

 よし、免疫力をアップするぞ! エイエイオー!

 そう豪語してみたものの、さて何を食べれば免疫力なるものが強化されるのか。

 もっぱら言われているのが、インドカレーである。その論拠は、感染拡大のニュースが流れ始めた当初、武漢から帰国したインド人に新型コロナウイルスの感染者がいなかったという噂にあったようだ。たしかに感染者数が少ないねえと感心していたら、最近、インドにも増え始めている。今後、さらに増え続けるのかどうか、そこらへんの確証はないけれど、それでもなお、カレーは身体によさそうな印象がある。というか、そもそもインドの方々は免疫力が飛び抜けて高いのではあるまいか。苛酷な気候、高い人口密度、大河にての沐浴。日常的にそのような環境下で生活している人々は、除菌がいちばんと思っている脆弱な日本人よりはるかに強靱と思われる。そうだ、インドへ行こう! じゃなくて、インド料理屋さんへ行こう! 思い立ったが吉日だ。さっそく近所のインドカレーのお店に足を運ぶことにした。

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