「失業したわけではありませんが……」――台湾・馬英九総統は、昨年秋から暮れにかけ、世界各地に派遣した「両岸(対中)関係担当」の国家安全局要員の一部を一時帰国させ「今後、大陸への浸透活動や機密情報の収集は慎重に」と指示した。ある要員は、急な方針転換に戸惑い、「開店休業」状態だとボヤく。 台湾には総統直轄の国家安全局と、国防相直属の軍情報局という二つの情報機関がある。馬政権発足とともに両機関トップは交代し、軍情報局も大陸でのスパイのリクルートや浸透を自粛するよう命じられた。だが基本的な軍事情報収集は続けている。国家安全局をより厳しく締め付けたもようだ。 一方、中国側は十二月三十一日に胡錦濤総書記が「台湾同胞に告げる書」の三十周年を記念する演説で軍事交流まで呼びかけたように、融和攻勢を強めている。台湾が求めるWHO(世界保健機関)へのオブザーバー参加の容認なども最終決定したと中国筋は明かす。 十月一日の建国六十周年に予定する軍事パレードも、台湾を強く意識。同筋によると、江沢民時代の建国五十周年には東風15(射程六百キロ)、東風21(同千八百キロ)など台湾を標的とする中距離ミサイルを登場させ威嚇したが、今回は射程の長い「巨浪2」(同八千キロ)、「東風31A」(同一万キロ)などが主役となる。

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