10万円給付では申請手続きで混乱も(C)時事
 

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、世界の政治経済の変化を加速させ、国家と国民の関係を変容させるかもしれない。

 新型コロナ危機への対応では国際的な協力体制の構築が重要であるにもかかわらず、現実には国家間の対立が増している。国民もグローバルな政策協調よりも国家の政策に期待し、政策への依存度を強めている。

 こうした流れを考える上では、「国際政治経済のトリレンマ」による考察を行ってみるのが1つの方法かもしれない。

 本稿では、新型コロナによる国際政治経済の変化、国家と国民の関係の変化を、なるべく平易にわかりやすく考えてみたい。

“黄金の囚人服”

「トリレンマ」と言えば、「国際金融のトリレンマ」を思い起こす人が多いかもしれない。「為替の安定性」、「資本の自由な移動」、「金融政策の自立性」の3つの政策目標は、一度に2つは達成できるが、3つすべてを達成することはできないというのが「国際金融のトリレンマ」で、現在では国際金融の中心的な理論だ。

 これに対して、「国際政治経済のトリレンマ」(以下、トリレンマ)は、「国家主権」、「民主主義」、「グローバリゼ-ション」の3つの政策目標・統治形態のうち、一度に2つは達成できるが、3つすべてを達成することはできないというもので、米プリンストン高等研究所の教授も務め、現在ハーバード大学ケネディ行政大学院教授であるダニ・ロドリックが2000年に提唱した。

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