金融危機の大波は確実に日本をも洗い始めた。金融大再編が行なわれた米国に続き、今年は日本でも金融機関の再編が本格化すると見られる。特に波が高いのは信託銀行と保険会社だ。 信託銀行業界では、長年取り沙汰されてきた「縁談」が動き出すかもしれない。住友信託銀行と中央三井信託銀行の組み合わせだ。ほとんどの信託銀行がメガバンクの傘下に組み込まれる中、その流れと一線を画す両行が経営統合するとの観測は何度も浮上しては消えてきた。 障害は二つあるとされる。一つは、中央三井信託がまだ返済を終えていない公的資金が二千億円以上にのぼること。もう一つは、トップ同士の相性だ。一九九八年の社長就任から十年間経営の実権を握ってきた住友信託の高橋温会長と、六年近く社長の座にある中央三井信託の田辺和夫社長の“犬猿の仲”は、つとに知られている。 しかし、「百年に一度」と言われる金融危機が統合への追い風を吹かせる。景気後退で企業の業績が悪化し、貸付金を増やせない金融機関の収益力は低下。生き残るためには経営基盤を強化しなければならないからだ。 また、住友信託は昨年大幅な若返り人事を行ない、高橋会長より一回り以上若い常陰均社長が誕生した。常陰氏は、中央三井信託の北村邦太郎常務執行役員と同期で、プライベートでも酒を酌み交わす仲。両行に居座る“犬猿”の会長と社長が身を退けば、経営統合は一気に実現に近づくと見られている。

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