とりわけ批判を集めた教会前で聖書を掲げるパフォーマンスは、当の教会側も「聖書を政治利用してはならない」と反発した(C)AFP=時事
 

 米国では祝日であったメモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)に発生したある1人の黒人男性殺人事件が、いまや全米各地を揺るがす抗議デモや略奪の発火点となった。

 5月25日、ミネソタ州ミネアポリスで白人警官が黒人男性ジョージ・フロイド氏を8分間以上膝で首を押さえつけた結果、死亡する事件が発生した。白人警官に首を押さえつけられる現場を撮影した映像はSNS上でまたたく間に拡散され、フロイド氏が白人警官に訴えていた「息ができない(I can’t breathe)」との叫びは、全米各地で展開されている人種差別に反対する抗議デモの参加者のスローガンの1つとなっている。

 事件後に全米各地で広がった抗議デモや略奪の規模は、52年前の1968年4月にテネシー州メンフィスでマーティン・ルーサー・キング牧師が暗殺された直後の抗議デモや略奪の規模を上回っており、半世紀以上が経過しても依然として米国が直面している人種問題の根深さを改めて浮き彫りにしている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。