組織的犯罪の逃げ切りを許すな

執筆者:2009年2月号

“標準報酬改竄”は年金問題の中でも最も悪質な犯罪だ。その罪を組織的に隠蔽しようとする官僚の“重犯”を見逃してはならない。「一番大事なのは被害者の救済です」 舛添要一厚生労働大臣は、記者会見で厚生年金の標準報酬改竄問題について問われると、必ずこの言葉を口にする。しかし、問題が表面化してから一年以上たっても、厚生労働省によって救済された被害者は一人もいない。当初は数件とされていた改竄は、調査が進むにつれ百万件を超える可能性が高まり、被害者の数も底なしで増える見通しだ。 この問題を通じて有名になった「標準報酬」は、もともと社会保険事務の専門用語。サラリーマンが支払う厚生年金保険料の基準になるもので、給与額に比例して決まる。 給与から天引きされた保険料は会社負担分と合わせて事業主が国に納めるが、資金繰りの苦しい中小企業では滞納も珍しくない。保険料の納付記録を改竄して標準報酬を引き下げると、納めるべき保険料額が少なくなるので、見かけ上の滞納額は減る。ただし、加入者が将来受け取る年金給付も本人の知らないうちに減ってしまう。「改竄問題」とは、社会保険庁の出先機関である社会保険事務所の職員が、標準報酬を記録した公文書を改竄していた事件を指す。彼らは、本来の業務である滞納取り立ての手間を惜しみ、標準報酬を不正に引き下げて、徴収すべき保険料を闇に葬っていたのだ。

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