牡鹿半島にある鮫浦湊。おだやかな海のようだが……(筆者撮影、以下同)
 

 6月上旬、およそ1年ぶりに訪ねた牡鹿(おしか)半島(宮城県石巻市)。美しい三陸復興国立公園の南端らしく、リアス式海岸の道の入り江はまぶしいほど明るく、新型コロナウイルス禍の鬱屈を晴らしてくれる。

 が、9年前の東日本大震災で被災した浜々の集落は跡形もなく、復旧工事もいまだ終わらず、住民の多くは流出し、工事関係者以外の人の姿も見えない。

 半島に残る漁師たちの復興の拠り所は、昔から変わらず豊かな魚介をはぐくむ宝の海だ。

 ところが、震災の津波の後、三陸の海に原因不明の「異変」が続く。養殖のホタテなどに広がった深刻な「貝毒」で、それが今年、宮城特産のホヤ(マボヤ・尾索動物亜門ホヤ綱の海産動物)にも前例のない形で現れた。旬に入った5月半ばから水揚げ、出荷の自粛が続き、最高の味覚のホヤは海に浸かったまま。

 復興がいまだ遠い中、大消費地だった韓国の禁輸で販路を絶たれ、希望を託す国内の新型コロナ禍終息を待っていた漁業者たちに、新たな難題が降りかかっている。

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