「投資銀行宣言のはずが、投資“損失”宣言になってしまった」 みずほフィナンシャルグループの前田晃伸社長は、二〇〇八年九月中間決算発表の席上でそう口にした。 みずほグループは、〇八年三月期連結決算で六千四百五十億円、さらに九月中間連結決算でも七百二十億円という巨額のサブプライム関連損失を計上。その原因を作ったのは、大企業との取引や国際業務、投資銀行業務を展開するみずほコーポレート銀行である。「投資銀行宣言」を掲げるコーポ銀は、齋藤宏頭取の陣頭指揮の下、積極的に海外の証券化商品を購入していた。 だから、前田氏の発言は齋藤氏への当てつけのように響いた。複数の銀行が合併した各メガバンクの中でも、みずほグループ内の権力闘争はつとに有名だ。前田氏はかねてより齋藤氏と緊張関係にあるとされる。 だがいま、みずほグループが抱える根深い構造問題が、皮肉な形で経営陣の“結束”を強めている。 構造問題とは何か。みずほグループは、前田氏が社長を務める持ち株会社の下に、コーポ銀と、中小企業と個人客を担当するみずほ銀行をもつ。この「2バンク制」が、いま機能不全に陥っているのだ。 メガバンクは、預金よりも貸出金の方が多いのが常態だ。三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行は、貸出金のうち預金で賄い切れない部分を、短期金融市場を通じ、資金が余っている金融機関から貸出金利より安い金利で調達する。

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