岩宿遺跡の前には相沢の功績を称える碑がある(筆者撮影、以下同)
 

 とてもマニアックなニュースだが、千葉県市原市の「稲荷台1号墳」(5世紀後葉)の発掘現場から出土品87点を無断で持ち帰ってしまった同市の男性(72)が返還を求められ、千葉地方裁判所で裁判になるという(『千葉日報』2020年7月2日)。

 男性は市の調査団に加わっていた市文化財センターの嘱託職員だった。発掘品を持ち帰ったのは平成2年(1990)で、翌年退職した。当人は、調査団長に許可を得ていると弁明している。これに対し市原市側は、報告書の作成が終わっていないため、出土品が必要と訴えたのである。

 ちなみに、稲荷台古墳群は、無名ではない。12基の古墳からなり、2人の武人を埋葬する稲荷台1号墳から、銀象嵌を施した鉄剣が出土している。それが「王賜」銘鉄剣で、日本最古の有銘鉄剣だ。ヤマトの王が東国の武人を直接支配していたことを示す、貴重な資料として知られている。男性が担当したのは、その1号墳だった。

 市原市が須恵器や武具の一部などの出土品が行方不明になっていることに気づいたのは、平成10年(1998)のことだ。結局男性宅から77点をとりもどしたが、10点(鉄鏃=てつぞく=の破片など)が返還されていない。

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