ジョージ・フロイドさんがが殺害された食料雑貨店「カップ・フーズ」の壁(筆者撮影、以下同)
 

「防弾チョッキとヘルメットは持っているのか!」

 警察から必死に逃げてきた20代の白人の男に向かって、

「事件はどこで起きているのか?」

 と私が尋ねると、こんな怒鳴り声が男から返ってきた。

 もちろん、そんなものは持っていない。

 まぁ大袈裟に言っているのだろう、くらいに思って、彼が逃げてきた方向に歩を進める。

 街灯が少ないところでは、空の高い位置にある半月の明かりだけが頼りだ。

 私の後ろには、焼け落ちた地元のレストランがあり、前方右手には、3日前に火を放たれ、いまだに煙を上げる全国チェーンスーパーのターゲットが見える。

 私はこのターゲットの周囲に車を停め、取材をはじめていた。

白の四輪駆動車にペッパースプレーを吹き込む警官

 2、3分歩いたところで、私の横を通り過ぎようとした白の四輪駆動車が、追いかけてきた4台のパトカーに行く手を塞がれた。数人の警察官が飛び降りてきて、運転手に大声で叫ぶ。運転手が窓を開けるやいなや、警官がペッパースプレーらしきものを、車の中に数回噴射した。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。