『2020年防衛白書』に欠けている「戦略」と「現実」の乖離を防げ
2020年8月9日

今年度版の『防衛白書』。表紙の色や柄は、「令和」の由来にちなんで「梅」がモチーフだ(防衛省HPより)
去る7月14日、『2020年防衛白書』が公表された。
「中国が執拗に繰り返す領土・領海における現状変更」
「中国軍事の不透明性」
「北方4島は日本固有の領土」
といった記述は、恒例の如く中国、ロシアが即反応し、非難を表明した。
『白書』「大綱」「別表」「戦略」
軍事情報を何処まで公開すれば「透明」と言われるのだろうか。
軍事の世界では、手の内を明かさない、むしろ欺瞞によって優位に立とうとする性癖がある。従って、『Jane’s Yearbook』(イギリスIHS Markit)や「SIPRI」(ストックホルム国際平和研究所)が刊行する軍事情報に信頼が寄せられながら、軍事諜報が行われるわけでもある。これらは、軍事専門家の知るところであり、なかなか一般国民の知見に届かない。
日本の「防衛・安全保障政策」は、毎年刊行される『防衛白書』や、概ね5年ごとに政府が公表する「防衛計画の大綱」(以下「大綱」という)によって知ることができる。さらに、日本が保有する防衛力は、大綱「別表」(以下「別表」という)に示され、「中期防衛力整備計画」及び「年度防衛予算」が喫緊の整備を明らかにしている。
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