昨年夏以降の原油価格の下落を受け、中国が石油戦略備蓄の拡大を急いでいる。 中国の石油業界関係者によると、青島の戦略石油備蓄基地には、昨年十一月だけで百万トンの原油が注入されたという。同月の中国の原油輸入量は千三百三十六万トンで、その一割近くが備蓄に回った計算だ。この関係者はさらに「十二月もこれ以上の備蓄が行なわれた。一月も同様のペースが続く計画だ」と明かす。 中国が備蓄を急いでいるのは、今回の下落局面を「千載一遇の好機」と受け止めているためだ。中国はもともと世界有数の産油国でもあり、一九九二年までは石油の純輸出国だった。しかし、急速な経済発展による石油消費量の急増で、わずか十数年の間に石油自給率は約五〇%にまで落ち込んでしまった。生産量も伸びてはいるものの、消費の伸びには遠く及ばないため、自給率は今後も下がり続ける見通しだ。 このため、中国は二〇〇三年から国内四カ所で戦略石油備蓄基地の建設に着手し、〇六年から備蓄基地への注入を開始、二〇二〇年までに約二億トンを備蓄する計画だった。ところが、中国のこうした動きに合わせるように投機マネーが原油市場に流れ込み、原油価格は高騰。昨夏までの備蓄量は数百万トン程度にとどまり、政府関係者が「備蓄用に大量に調達しようとすれば市場価格が跳ね上がる。思うように備蓄が進まない」とため息をつく状態が続いていた。

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