逃亡先のレバノンで開いた記者会見では「無罪」を主張していたが(C)AFP=時事
 

 レバノンの首都ベイルートの港湾地区で8月4日に起きた大規模な爆発事故は、同国に文字通り激震をもたらした。人的・物的に甚大な被害が出ただけでなく、責任を取る形で内閣が総辞職に追い込まれた。当局の対応に憤る市民の抗議デモも続き、情勢は混迷の一途をたどっている。

 世界をあっと言わせた昨年暮れの大脱走の末、レバノンにたどり着いた日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン被告は、7カ月後にこんな大惨事に遭おうとは思ってもみなかったに違いない(注1)

 日本政府はゴーン被告の身柄引き渡しをレバノン政府に要請しているが、レバノン側は「自国民は引き渡さない」として、拒否する姿勢を貫いている。

 レバノン国籍を持つゴーン被告は、不用意に国外に出ない限り、自由は約束されているのも同然と信じているようだ。

 しかし、経済危機下のレバノンでは、困窮する国民の不満がマグマのように溜まっている。そこへ爆発事故で多数の犠牲者を出すに至り、腐敗し、危機対応能力を欠く統治機構に対する怒りが沸点に達しようとしている。

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