株価が下がったといっては国に買い取らせる。銀行は、何度同じことを繰り返すのだろうか。そのツケを払うのは、結局は国民だ。「何でもあり」の様相を呈してきた政府の経済対策だが、ついに「株式の買い取り」まで登場した。 年明けの通常国会に自民、公明の議員提案で法案が衆議院に提出され、既存の「銀行等保有株式取得機構」による買い取りを三年間に限って再開させる、としている。 取得機構は株価が大幅に下落した二〇〇二年一月に設立された。その年の二月から〇六年三月までの間に、銀行が保有する株式や企業が保有する銀行株を直接買い取ってきた。その合計は一兆五千八百六十八億円にのぼった。〇六年四月以降は買い取りを停止、市場などでの売却を進めていたが、今回の株価の急落で、保有株式の売却を停止している。 取得機構は政府保証の付いた債券を発行、それを原資に株式を買い取ってきた。今回の法案では、政府が二十兆円の公的資金枠(すなわち国民の税金)を用意することになっている。 〇二年以降、公的な枠組みで、銀行という私企業が保有する財産を買い取ってきた「大義名分」は、日本の金融システムを守ることだった。日本の銀行は企業と株式を持ち合っている額が大きく、株価が下がると銀行の自己資本が劣化、それが貸し出し余力の低下につながり、再び企業の株価下落につながる。そうした負のスパイラルを止めるためには、銀行保有株の買い取りが必要、という理屈だった。

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