オバマ米政権は発足直後に、中東和平担当にミッチェル特使を、アフガニスタン・パキスタン問題にはホルブルック特使を任命し、イスラエルのオルメルト首相、パレスチナ自治政府のアッバース大統領に電話をかけ、キューバ・グアンタナモ基地の「敵性戦闘員」の収容施設を一年以内に閉鎖するよう命じる大統領令に署名するなど、中東政策の変化を示す象徴的な施策を次々に行なった。就任演説では「ムスリム(イスラーム教徒)世界には、互いの利益と互いへの尊敬にもとづいた新しい道を求める」と呼びかけた。「尊敬」こそがブッシュ前政権時代に中東に対して欠けていたものだ。 オバマ大統領として最初の単独テレビ会見は、サウジアラビア資本のアラビア語国際ニュース局「アラビーヤ」に対して行なった。アラビア語国際ニュース局で最も影響力のある「ジャジーラ」が民族主義・反米感情的な報道姿勢で人気を集めるのに対して、「アラビーヤ」は国際協調・リベラル路線を打ち出して対抗軸となろうとしている。オバマ政権が中東の現実に関する適切な判断能力を持つスタッフに支えられていることを示す的確な選択だろう。 もちろん、各国の多くの論評が指摘しているように、中東問題に関するオバマ大統領の「言葉」の適切さは評価できるものの、本当に必要なのは「行動」であり、近い将来に困難な情勢を見極めた決断が迫られてくる。オバマ政権を待ち構える中東情勢を概観してみよう。

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