飲み会など「密」の場で濃厚接触者とされることも(写真はイメージ)
 

【筆者:和田眞紀夫わだ内科クリニック院長(略歴は文末に)】

 濃厚接触者とは何なのか。何のためにこのような概念を設けて行動自粛を強要しているのか。当たり前のようで当たり前ではない。この答えを書く前に具体的な事例について説明しておきたい。

 先週末に当院にプロの音楽家の方が来院された。その日の朝に37.1℃の微熱があって倦怠感があるという。連日のライブ演奏を控えている状況で、もしコロナであったら多くの人に感染させてしまうという懸念から早急のコロナの検査が必要だった。日頃当院でも唾液のPCR検査を実施しているのだが、あいにくその日は連休初日の夕方。連休中は民間の検査会社が休みのためにPCR検査用の検体を採っても検査をしてもらえない(日・月曜日に感染者数の発表が少ないのはこのためである)。待って連休明けにPCR検査を実施しても結果が出るのは早くて翌日で、コロナかどうかがわかるのに4日も5日もかかってしまうことになる。

 やむなく日ごろは実施していない、感度の劣る簡易抗原検査を実施してみたところくっきりと陽性のバンドが出現した。医療機関には感染者が出た場合速やかに保健所に届け出る義務があるが、保健所は連休中電話が通じない。こういう時のために東京都の緊急連絡ダイアルが用意されているのだが、何度電話しても応答がなかった。結果的には翌朝の日曜日にやっと連絡が取れたのだが、その後にこの患者さんは状態が悪化してしまい結局入院となった。とはいえ発症から10日が経過して症状が改善していれば再検査はせずに普通の生活に戻っていいとの説明を受けた。

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