卸の合併頓挫で見えた「薬価」の裏側

執筆者:清水常貴2009年3月号

“クスリ九層倍”の利益は、どこが享受しているのか。卸業者は「弱い立場」だというが、巨大卸企業が生まれていたら、大変な事態も――。 わずか三カ月での破談だった。医薬品卸の最大手「メディセオ・パルタックホールディングス(メディパル)」(東京証券取引所一部)と第二位の「アルフレッサホールディングス」(同)が、四月一日に予定していた合併を白紙撤回すると発表した。合併発表は昨年十月十日、白紙に戻ったのが一月九日だ。両社は「独占禁止法の事前相談を申し出ていた公正取引委員会から第二次審査に移る意向が示されたため」と説明する。 計画では二月中旬に両社とも合併承認を求める臨時株主総会を開き、四月一日から新社名「アルフレッサ・メディパルホールディングス」でスタートするはずだった。だが、独占禁止法に触れるかどうかの結論を九十日以内に出すことになっている公取の第二次審査が四月に間に合うかは微妙。審査中に臨時株主総会を開くわけにもいかず、営業の現場も混乱するということで、破談となったようだ。 いったん発表した合併計画を白紙に戻すのも異例だが、そもそもメディパルは最大の仕入先が武田薬品工業で業界では武田系とされ、アルフレッサは第一三共を主要仕入先にする第一三共系で、しかも業界トップを争うライバル同士の合併ということ自体異例だった。合併すれば売り上げ四兆円の巨大医薬品卸が誕生したはずで、地域によっては寡占状態になることが問題視されていた。今回の合併白紙撤回で図らずも「薬価」の裏側が姿を覗かせた形だ。

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