フランス議会で人工妊娠中絶を合法化した後、シモーヌ・ベイユ保健相と会談する在りし日のジスカールデスタン大統領 (C)AFP=時事

 

 フランスのバレリー・ジスカールデスタン元大統領が12月2日、新型コロナウイルスの感染が原因で死去した。94歳だった。

 48歳の若さで大統領に就任し、在任期間は1974~81年。今から40年以上も前だ。筆者もリアルタイムで彼の時代をウォッチしたことはない。

 1990年代にパリで特派員をしていたとき、ジスカールデスタンは既に大統領府を去り、単に中道政党の党首だった。その後、欧州連合(EU)の基本条約「欧州憲法」を起草する責任者となったが、2005年にその批准を母国フランスに国民投票で否決され、発効は頓挫する。歴代フランス大統領の人気投票では、上位に顔を出すのはまれだった。つまり、どちらかというと印象の薄い指導者だった。

 だが、ジスカールデスタンが大統領に在任していた時期のフランスの政治・社会、さらに世界の変容を振り返ってみると、あることに気付く。

 1つの時代が幕を閉じ、新たな胎動が兆していたということだ。その変化の多くは現在にまで地続きでつながっている。ジスカールデスタンは、1970年代という転換期をプロデュースし、現代への起点とした指導者だった。

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