ソマリア沖への自衛隊派遣は既定路線。だからこそ、イスラム原理主義と深く結びつく彼の地の実態を把握すべきではないか。 住宅地の路地裏で人の背丈ほどのサボテンが群生する一角を覗き込むと、グニャグニャに曲がったヘリコプターの回転翼が見えた。全土を実効支配する政府が一九九一年から存在しない東アフリカのソマリア。二〇〇五年六月と〇七年一月の二度にわたって首都モガディシオを訪れた筆者が見たのは、九三年十月の戦闘で撃墜された米軍ヘリ・ブラックホークの残骸であった。 ブラックホーク撃墜に象徴される国連平和執行活動の失敗から十余年。このほど海上自衛隊の護衛艦が海賊対策のためにソマリア沖に派遣されることになったが、海賊の拠点ソマリアについては極めて情報が乏しい。そこで本稿では、ソマリア国内の「イスラム原理主義の動向」と「金の流れ」の二点について解説を試みたいと思う。資金源に事欠かない武装勢力 〇六年六月にモガディシオを制圧した原理主義勢力「イスラム法廷連合」は、その六カ月後、暫定政府を支援するエチオピア軍の侵攻で国の南部に撤退した。しかし、その後、法廷連合の穏健派は暫定政府に接近し、今年一月三十一日に隣国のジブチで行なわれた暫定政府との統一国会での選挙で、穏健派イスラム主義者のシャリフ・アーメッド氏を大統領に選出した。

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