“ネット先進国”韓国の悩ましき自縄自縛

執筆者:小嶋稔2009年3月号

日本ではインターネットにつなぐ「入り口」に過ぎないポータルサイト。だが韓国では、世論を動かしデモに動員する力まで持ち――。[ソウル発]韓国の新聞社やテレビ局のニュースサイトで、ちょっとした異変が起きている。年明けから各社のページビュー(閲覧数)が急増しているのだ。インターネット市場の調査機関、コリアンクリックによると、一月は昨年十二月に比べ一〇四%増と二倍に膨らんだ。世間の注目を浴びる出来事もあるにはあったのだが、特定の記事にアクセスが集中したわけではない。引き金になったのは、あるポータルサイトのトップページの“変化”だった。 そのサイトとは独自の検索技術を武器に訪問者が月間三千万人を超える最大手「ネイバー」。十二月までは大手新聞社や通信社などのニュース媒体から提供される記事を自社サイト内で読めるようにしていたのを、一月から記事の見出しをクリックすると各マスコミのサイトへジャンプする方式に変えた。当然のことながら、ネイバーではニュースページに限れば訪問者が二割近くも減少し、アクセス数トップの座を別のポータルサイトに明け渡してしまった。 このページ改変がネットビジネスの生命線といえる広告収入に響く恐れがあることは、無論ネイバーも承知の上だ。それでもあえて改変に踏み切ったのは「政治的に中立な立ち位置」を求めたという切迫した事情が働いている。

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