珠江デルタ再活性化に「机上プラン」は有効か

執筆者:八ツ井琢磨2009年3月号

 中国の改革・開放をリードしてきた広東省の珠江デルタ地域。省都の広州市や経済特区の深セン市を中心とするこの地域は、香港に接する強みを生かし、輸出向け軽工業製品などの生産拠点として発展してきた。二〇〇八年の貿易総額は約六千六百億米ドルで中国全体の四分の一を占める。しかし、世界金融危機で輸出企業は大打撃を受けており、今年の貿易額は前年比マイナスとなる可能性もある。 こうした事態を踏まえて作成されたのが二〇二〇年までの発展ビジョンを示した「珠江デルタ地区改革発展計画綱要」。マクロ経済政策を統括する国家発展改革委員会がまとめた。「先進製造業」と「現代サービス業」を核とする新たな産業構造を構築し、一人当たり域内総生産(GDP)を二〇一二年に八万元(約百万円)、二〇年で十三万五千元(約百八十万円)に高めることが柱だ。「先進製造業」とは資金・技術集約的で経済波及効果が大きい重電機、自動車、鉄鋼など。自動車についてはトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車が広州市に進出するなど産業集積が進んでいるが、地元製造業の一段の「重厚長大」化を進める方針だ。 一方、経済成長の新たなエンジンと位置づけているのが金融、物流などを含む「現代サービス業」。経済全体に占めるサービス業の比重を一二年で五三%、二〇年で六〇%に高めるとしている。

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