進出図る中露vs.EU「ワクチン外交」攻防戦

執筆者:広岡裕児2021年4月22日
新型コロナワクチンは外交の新たな「武器」になってしまったのか――

 

 欧州連合(EU)では昨年12月27日、全加盟国一斉に鳴り物入りで新型コロナワクチンの接種が始まった。だが、1月に入って供給不足に陥った。英米によるワクチンの囲い込みと、生産の遅れが原因である。そのためEUは、域内で製造されるワクチンの輸出規制を行った。

 現在までオーストラリア向けの1回だけが輸出禁止になったが、その理由は、アストラゼネカ社がEUに約束の量を納入していないにもかかわらず、英国には優先して輸出していたからだ。

 なお輸出規制の決定には、輸出先の蔓延状況による緊急度が考慮される。そこで、英国ではなくオーストラリアが規制の対象となったわけだ。日本も数字上は緊急度が低い。今後はこうしたとばっちりを受ける可能性が出てきた。

スプートニクⅤから“ワクチン政変”

 ワクチン接種開始当時、EUで承認されていたのはファイザー、モデルナ、アストラゼネカの3社製のみだった。

 ところがEU加盟国であるハンガリーは、1月22日にロシア製のスプートニクⅤを200万回分、29日に中国のシノファーム製ワクチンを500万回分発注した。

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