政府紙幣を正しく理解してから議論せよ

執筆者:高橋洋一2009年3月号

ノーベル賞学者にとっては常識の政策も、わが国ではキワモノ扱い。無責任な批判者たちは、「百年に一度の危機」をご存じないらしい。  通常使われている紙幣(日本銀行券)とは別に、政府が独自に発行する政府紙幣に関する議論が盛り上がっている。筆者は二〇〇一年当時、デフレ対策として政府紙幣発行を考えた(岩田規久男編『まずデフレをとめよ』日本経済新聞社)。  もっとも政府紙幣の考え方は珍しいものではない。古今東西、百年くらいのスパンで考えれば、しばしば出てくる定番政策である。筆者が一九九八年から米国プリンストン大学にいたとき、当時の学部長バーナンキ(現・米連邦準備制度理事会議長)にも聞いたことがあるが、彼は、政府紙幣の発行と、政府が国債を発行して中央銀行がそれを買い取るために中央銀行券を発行するのは同じであるとした上で、後者は、MONEY-FINANCINGあるいはHELICOPTER-DROPPED-MONEYといい、ノーベル経済学賞をとったフリードマンも後者を主張していたと言っていた。〇三年四月、同じくノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ教授が来日したときも、財務省での講演で政府紙幣の発行を提唱している。このように、政府紙幣の話は、デフレ大恐慌のようになると自然と出てくるものなのだ。

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