人類は、これから新型コロナウイルスと長いつき合いをしていくことになるだろう。おそらくは、たちの悪いインフルエンザのようなかたちで毎年姿を現す。もちろんウイルスはたえず変異していくから、その過程では毒性が強くなることも、逆に毒性が弱まることもあるだろう。そういうことをくり返しながら、感染力の強いウイルスが新型コロナウイルスの世界の覇者となっていくに違いない。

処方箋のない感染症対策

 新型コロナウイルスが拡がりはじめたとき、「コロナとの戦い」、「コロナとの戦争」という勇ましい言葉を使う人たちが登場した。

 いまでも一度抑え込むまで強い規制措置をとるべきだという人がいる。だがこの発想は二重の意味で間違っている。ひとつは、感染症は撲滅することなどできないということを忘れている点で。もうひとつは、コロナウイルスもまた単独で生きているのではなく、現在の生態系のなかに生存の基盤をもっていることをみていないという点において、である。

 過去に発生した感染症で、ほぼ撲滅されたと考えられているのは天然痘しかない。天然痘ではワクチンの効果が絶大だった。結核などは抗生物質の発見によって劇的に減少したが、といっても今日でも感染者は発生しているし、最近では抗生物質への耐性をもった結核菌も生まれている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。