6月15日の参議院本会議で、米国よりも進んだ内容を持つ宇宙資源法が可決成立した(写真は一礼する井上信治科学技術担当相)(C)時事

 多国間枠組を好ましいとする動向は勢いを得て、2018年になると単なる意見交換ではなく、詳細な宇宙資源開発利用の国際枠組に向けた議論を進めるためにワーキンググループ(WG)を設置する方向性が模索されるようになっていった。しかしこれは、国連という場だからこその「世論」ともいえる。

老獪なヨーロッパ:ルクセンブルク法とハーグWG

 2017年7月には、ルクセンブルクが宇宙資源法を制定し、「宇宙資源は取得することができる」(第1条)と明確に規定した。所轄官庁を定め、宇宙資源開発の許可・監督手続も盛り込んでいる点など、法律自体としては、米国より一歩進んでいるといえるものである。理論的には同法に基づいて企業はすぐに活動許可を求め、宇宙資源採取に進むことができるからだ。

 ルクセンブルクは1人あたりのGDP(国内総生産)が世界1位の金融大国であり、法人税を低く設定するなどして外資の導入に長けていることはよく知られているが、宇宙産業でも世界1、2位を争う運用衛星数を誇る通信企業「SES」社の本拠地である。欧州の小国ではあるが、これまでも宇宙ビジネス大国であったといえる。その嗅覚もあり、いちはやく宇宙資源開発に将来性を見出し、企業誘致のために国内法を制定したのである。日本のispace社も、2017年以来、ルクセンブルクに支社を置いて月の資源開発計画を進めている。

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