中国がインド洋の覇権取りに乗り出してくるのではないかと強い危機感を持っているインドは、四万トン規模の航空母艦の自力建造を決めた。二月二十八日、同国南部のコチン市で起工式が行なわれ、国防相や海軍関係者が出席した。「海を制する者は世界を制する」とは海洋戦略論で有名な米国のマハン提督の論だが、中国はこれを実地で示すかのようにインド洋進出への環境作りに努めている。同海域への直接の出口を持たない中国はミャンマーに接近、同国領のココ島を借り受け、かなり以前に通信基地を設置している。 さらに、ソマリア沖の海賊対策で国連決議が採択されると、いち早く艦艇を派遣。駆逐艦など三隻をインド洋アラビア海域に遊弋させている。海賊退治という戦闘目的での艦艇の外洋派遣はこれが初めてだが、台湾の商船まで護衛する“意欲”を見せている。空母の建造も着々と進める中国の姿勢にインド政府は警戒心を募らせ、海軍力増強に力を入れ始めた。 インドは二〇〇四年一月、ロシアから中古空母「アドミラル・ゴルシコフ」を約十五億ドルで購入することで合意し、契約書に調印している。しかし契約までに約十年を要したこの空母、ロシアが改修後に修復コストの増加を理由に追加料金の支払いを要求。インドはこれに応じず、いまだに空母は引き渡されていないという経緯もある。

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