「三度の飯より選挙が好き」な菅首相だが、政治不信は選挙対策で鎮まるレベルではない ⓒ時事

 7月23日夜、東京・千駄ヶ谷の国立競技場。五輪開会式のスタンドに観客はいない。菅義偉首相は天皇陛下の隣で、華やかなセレモニーやマスク姿の選手たちの入場行進を見守った。新型コロナウイルスの感染拡大という前代未聞の状況で強行開催された五輪。菅氏の表情からは、どうにか開会式までこぎつけたという安堵と先行きに対する不安が見て取れた。

 菅氏はせっかちだ。目の前の仕事をしながら先々の日程を気にして、秘書官たちを困らせることが多い。開会式に臨んだ菅氏の頭の中にあったのは、秋までには必ずある衆議院の解散・総選挙と自民党総裁選をどう乗り切るかという難題である。

 衆議院議員の任期切れ(10月21日)が迫る。自民党の総裁任期切れ(9月30日)も近づいている。9月中に自身の手で解散・総選挙に打って出て勝利し、総選挙後に先送りされる総裁選は無投票で再選、さらに3年の任期を得る――それが菅首相の基本戦略だ。政府のコロナ対策の不手際が続く中で五輪の開催が強行されたことに、世論の反発は強まる。総選挙に向けた各種世論調査でも、自民党の苦境が色濃くなっている。

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