好調な石油収入を見込んでロシア政府が北方領土などのために策定した特別事業計画が、世界的な金融危機のあおりで頓挫している。「日本の支援は無用」と強気だった北方四島のインフラ整備も当分放置される見通しだ。 この計画には二〇一三年までに約二兆六千億円に相当する予算が付き、北方領土はこの間、ロシアで最も手厚く予算が充当される地域になるはずだった。 だが、高度成長を続けたロシア経済も〇九年はマイナス成長に転落する。国家予算の歳入も三〇%減るため、政府は支出の大幅な見直しに着手。極東では一二年にアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を開くウラジオストクへの投資が優先される。二月にサハリンで開いた日露首脳会談では、APEC会場の島に架ける橋の工事に、日本のIHIなどが参加する計画が発表された。一方で、北方領土では早くも港湾工事などが中断した。 〇四年から石油輸出代金の一部を積み立ててきた虎の子の「安定化基金」も、このままでは一一年に底をつくという。プーチン首相が威信をかけるAPEC首脳会議、さらに一四年に黒海沿岸のソチで行なわれる冬季五輪にも、資源だけが頼みの経済体質が暗い影を投げかけている。

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