海外マネーの流出で下がり続ける不動産価格に、ボーナス・給与カットが拍車をかける。下落が止まらなければ、やがて社会問題に――。「不動産が大暴落する」――。そんな不吉なことを口にする不動産関係者が増えている。 急激な景気の冷え込みで住宅需要が一気に減少。一方で業者は在庫圧縮を急ぎ、実勢の販売価格が急落を始めているのだ。東京近郊の五千万―六千万円のマンションでは、年末から二月末までのわずか二カ月の間に五%前後、額にして三百万円も値引きした例が珍しくないという。 東京・渋谷から神奈川県へと向かう東急田園都市線は、沿線に大規模な分譲住宅地が広がる。銀行や商社など大手企業のサラリーマンが多く住む地域だ。そんな高級分譲地で今、不動産会社が抱えてきた「虎の子」の売り出しが相次いでいる。採算度外視で売却を急ぐ 宅地を分譲する不動産会社は、たいがい分譲地の中の比較的条件の良い区画を最後まで空き地として残しておき、周辺の町並みが完成した段階で売却していく手法を取る。分譲初期よりも販売価格が上がり、高い採算をとれるため、不動産会社にとっては「虎の子」の土地なのだ。 ところが、ここへ来て、状況が大きく変わりつつある。長年の法則が崩れてきたのだ。先行きの土地価格の下落が予想され、抱えていても高く売れないという危惧を抱いた不動産会社が一斉に売却に動いている。

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