悪名高きグアンタナモ収容所「閉鎖」までの遠き道のり

執筆者:クリス・クラウル2009年4月号

[ボゴタ発]バラク・オバマ米大統領は就任二日後の一月二十二日、キューバのグアンタナモ米海軍基地にあるテロ容疑者収容所の一年以内閉鎖を指示したが、正念場はこれからだ。現在も残る二百四十三人の収容者のうち誰を訴追するのか、訴追しない者をどこに移送するか、の二つの難題が立ちはだかっているからだ。 米西戦争の結果、二十世紀初頭に米国の租借地となったため、グアンタナモ基地は米国と対立するキューバに存在し続けている。その中にある収容所は、ブッシュ前政権の対テロ戦争の象徴的存在だった。元々は海上で保護されたハイチやキューバからの難民を収容する施設だった。だが、二〇〇二年一月以降、その門を通ったのは、目隠しをされ手錠をかけられた八百人もの「テロ容疑者」。大半は、〇一年九月十一日の米同時多発テロを受けて米軍が侵攻した、タリバン政権下のアフガニスタンから連れてこられた。 同収容所では、顔に布を被せて水をかけ、溺れるような恐怖を与える「水責め」を行なっていたことが発覚。捕虜の待遇を定めたジュネーブ条約への違反である。だが同収容所は米国領土にないため、国内の被疑者に与えられる諸権利はないとブッシュ政権は強弁した。しかし、拷問的な手法に対する批判は高まる一方で、昨年六月には、身内の米連邦最高裁判所ですら、同収容所のテロ容疑者にも不法な拘束を禁じる人身保護令は有効との判断を示した。

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