米国の“裏庭”で高まる中露のプレゼンス

執筆者:名波正晴2009年4月号

鉱物資源や食料の豊庫である中南米を、この二国が放っておくはずがない。反米政権と接近するロシア、実利を追う中国――。[リオデジャネイロ発]米国の「裏庭」である中南米地域に最近になってロシアが急接近し、先行する中国とともに同地域でのプレゼンスを高めている。昨年十一月、ペルーでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて中南米を歴訪した中国の胡錦濤・国家主席と競うかのように、メドベージェフ・ロシア大統領は約一週間のうちに四カ国を相次いで訪れた。訪問国の一つ、反米政権のベネズエラでは、ロシア艦隊をカリブ海に派遣しての初の合同軍事演習も実施。東欧での米ミサイル防衛(MD)計画やグルジアの南オセチア自治州問題をめぐり米露関係は冷戦後最悪といわれる中で、米政府への露骨な牽制となり、中南米を舞台にした「新たな冷戦」の兆しとも指摘された。「ロシアは中南米に戻ってきた」。昨年十一月二十二日のAPECペルー入りを皮切りに、メドベージェフ大統領はブラジル、ベネズエラ、キューバを駆け足で回った。ブラジルではルラ大統領と軍事技術協力の拡大などで合意。メドベージェフ大統領は「今後二、三年で(両国の)戦略的提携は最良のものにしなければならない」と訴え、協力の一環としてブラジルはロシア製攻撃ヘリコプターMi35Mを十二機購入した。

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