中国が金融危機に乗じて世界の資源の囲い込みに乗り出した。特に力を入れているのは、景気後退で企業価値が急落したオーストラリアの鉱山会社への買収攻勢だ。鉱山会社が金融危機により開発資金の確保に苦慮する中で、中国は約二兆ドル(約二百兆円)に上る外貨準備を使って札束攻勢を仕掛けている。 二月だけでも、鉄鉱石大手フォーテスキュー・メタルズ・グループへの湖南華菱鋼鉄集団の出資や、中国五鉱集団によるOZミネラルズの買収などが明らかになった。このほか、資源メジャーで豪州と英国が拠点のリオ・ティントに中国アルミニウムが百九十五億ドルを出資し、出資比率を一八%に増やす見通し。得られる資源は、電子部品の材料などとしても用いられる。 中国は世界有数の資源大国である一方、急速な経済成長により資源の多くを輸入に依存。金融危機前は国際的な資源価格の高騰に苦しんでいた。将来、世界経済が回復に向かえば資源価格が再び高騰する可能性が高いと判断し、株価が低迷する今のうちに代表的な国有企業を通じて買収などを仕掛けたのだ。 中国は二〇〇五年に米石油大手ユノカルの買収を仕掛け、米国の激しい反発をかった。今回、鉱山会社の買収攻勢に乗り出したことで豪州内にも反発があるが、中国側にはユノカルのような轍を今回は踏まないという読みがあるようだ。一つには、中国企業の出資による経営基盤の強化で、鉱山会社の失業者の増加を抑制することが大きな世論対策となるから。もう一つの鍵を握るのは、両国の首相だ。

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