英スタンダード・チャータード銀行が三月三日に発表した二〇〇八年決算で、税引き前利益が前年比一九%増の四十八億ドルに達した。金融危機の中、規模で世界第五位の大手行が好決算、それも大幅な増益を記録するのは異例。同行の業務は七割がアジア・太平洋地域で占められており、先進国の急速な景気後退から逃れられた格好だ。 インドの貢献も大きい。同国で法人向け事業の純利益は前年比二四%増の十一億一千万ドル、個人向け事業も一九%増の四億八千四百万ドル。金融危機前の好況期分もあるため、〇九年の業績は減速が予想されるが、前年割れの可能性は小さいと見られる。 ただ、インドでは景気の減速が続き、内外の金融機関が財務体質の悪化に神経質になり始めた。地価の上げ止まりを受けて、不動産向け融資は貸し渋り・貸し剥がしが本格化。業界二位のユニテックが度重なる資産売却に追い込まれている。「インド版エンロン事件」と呼ばれるITサービス大手サティヤム・コンピュータ・サービスの巨額不正会計も、発覚のきっかけは経営者一族の所有する不動産会社の経営危機だった。 また、最近増えているのは、経営難には縁遠い大手企業が自社や傘下企業の株式を金融機関などに対して担保に差し入れるケースだ。家電のビデオコンでは株式の三六%が、酒類最大手のユナイテッド・スピリッツでも三二%が、創業者株主などによって担保に設定された。インド最大の財閥タタ・グループでさえ、タタ製鉄(一四%)や自動車大手タタ・モーターズ(一三%)、電力のタタ・パワー(同)の株式を担保に入れている。

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