やっぱり牡蠣が好き

執筆者:阿川佐和子2022年2月6日
一度当たったからといっても諦められないあの味……(写真はイメージです)

 お腹の痛みに目が覚めた。かすかに吐き気も覚える。薄目を開けて時計を見ると、まだ三時前だ。

 ……という始まりで、かつて「小さな雑菌」というタイトルの一文を書いた。先日、まったくもってこの出だしと同じ状況に陥った。胃の不快感に覚醒し、薄目を開けて時計を見ると、夜中の二時半過ぎだった。夕刻にお腹に入れたものはだいたい七、八時間くらい胃に居座るらしい。律儀なものである。

 前回同様、私はしばらくベッドの中で我慢した。吐き気より眠気が勝れば、このまま平穏な朝を迎えることができるかもしれない。かすかな希望を抱きつつ、不快感を忘却の彼方へ追い払おうと努力した。深呼吸をしてみたり、寝返りを打って体勢を変えてみたり、あるいは小さな声で「頑張れ頑張れ!」と自らを鼓舞してみたりする。が、あらゆる努力の甲斐もなく、だんだん口内に生唾が溢れ出す。心なしか寒気も覚える。そして、もはや何をどう試みても耐えられないという限界に達したとき、意を決して掛け布団を勢いよく蹴散らし、お手洗いへ駆け込んだ。すべて前回と同じ行動経路である。夜中の孤独な七転八倒劇の幕開けだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。